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月神の恋人 拾遺 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第3章 ※貴方がほしいもの、私がほしいもの※


「うぅ・・・・」

小さな呻き声をあげると、キリカはそれきり固まってしまった。何回やっても勝てるどころか、勝てる気配すらないのだ。

(巌勝様、いくらなんでも強すぎだわ・・・)

だが、お互いの欲しいものを賭けている以上、後には退けないのである。

「巌勝様、もう一度!」

「分かった・・・」

という二人の会話を幾度繰り返したであろうか。

「もう一度!」

「これ以上やっても無駄だ・・・。潔く敗けを認めろ・・・」

「ですが・・・」

必死に食い下がるキリカに、半ば呆れたように黒死牟は溜息を洩らす。囲碁の盤を脇に退けると、静かに口を開いた。

じっと、キリカの顔を見据える。

「ところで・・・、キリカ・・・」

「はっ、はい!」

「約束は・・・、覚えているか・・・?」

「はい。それは勿論・・・」

巌勝様の欲しいもの。何だろうか。頬に手を当てながら、しきりに考えを巡らせた。

(困ったわ・・・。巌勝様、高価な物ばかりつけていらっしゃるから・・・)

果たして、己に用意できるような代物だろうか。けれど、約束を反古にする訳にはいかない。自身の勝利を信じて疑わなかったキリカは、どうしたものかと焦っていた。

「私の欲しいものが・・・、分かるか・・・?」

「な、何でしょうか・・?あまり高価な物はご用意できませんが、それでも良ければ・・・」

「違うな・・・、お前にしか用意できぬ物だ・・・」

「・・・?、私が・・・・、きゃあっ!」

言い終わらないうちに、その場に押し倒された。黒死牟の顔が間近に迫る。

「私が欲しいもの・・・、それはお前だ・・・」

「えっ・・・。まだ、お昼過ぎですし、せめて夜になってから・・・」

のし掛かる身体を少しでも押し返そうと、キリカは必死にもがいた。








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