第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
「おい、あんた。どういうつもりだ」
うっすらと額に汗を浮かべて、肩で息をする楽が部屋に入って来た。
後ろには、同じように息の上がった天と龍之介も一緒だ。
私は咄嗟に袖でゴシゴシと目を擦る。
楽は明らかに怒っている様子だった。そして私に、どういうつもりだ。と言い放った。
TRIGGERを優勝させる。その約束を反故にした私に、憤っているのだろう。
「…ねぇ。もしかして、泣いてる?」
天のその言葉を聞いてしまった瞬間。やっと引っ込めた涙がまた顔を出す。
『〜〜みっともなくて、ごめんなさい…!でも…どうしても悔しかったんです!
だって…絶対、TRIGGERが一番だった!一番、格好良かった…一番、輝いていたのに…!
悔しい…!っ…私は、こんなにも悔しい…、うぅっ…く、』
「お、お前…泣くなよ、男だろ!」
あまりの見事な泣きっぷりに、ちょっとだけ引いている楽は言った。
『ごめんなさい…優勝、約束…したのにっ、私は…駄目だった…貴方達は、あんなにも頑張ったのに゛…っ、私が…
私の、責任です…っ』
「俺達、優勝したんだよ!!」
『………ぺ?』
「っく、…ぺ…って、」くくっ
龍之介の突然の発表。私の、お腹の中のどこかしらかから湧き出て来た一文字に。天が思わず吹き出した。
どう頑張っても止める事の出来なかった涙が、ピタリと止まった。
「っ、人って…、極限に驚いたら、ぺって言うのかっ…く、面白過ぎんだろ」
私は顔を濡らしまくる涙や、その他の色んな液体を拭う事もせず。事態の理解を急いでいた。
『え…?ゆ?ゆうしょ…で、でもさっき八乙女さん、私に怒って…』
「当たり前だ。結果発表の途中で勝手に消えたんだぞ!そりゃ怒るだろうが!」
『…………あ』
やっと私の頭は、この状況に追いついて来た。
「やっと気付いた?」
天は、後ろにいた姉鷺からトロフィーを受け取って。私にそれを手渡した。
「ブラックオアホワイト “ 男性アイドル部門 ” きっちり優勝してきたよ」