第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
そこからも、まさに地獄のトレーニングは続いた。
忙しい中の練習にも関わらず、彼らは本当に努力していた。
その甲斐あって、TRIGGERはメキメキと成長した。まだこれだけの伸び代が残されていた事に 心の底から驚いたくらいだ。
「明日の本番、大丈夫なんだろうな」
社長室にて、まるで尋問かのような圧を受ける。
『勿論です。やれるだけの事は全部やりました』
「そんなもんは何の役にも立たん。過程はどうだっていい。
優勝出来るのか。それだけを聞いている」
心の中で、小さく息を吐く。
『はい』
「よし。ならばいい。アイツらを呼べ」
『失礼します』
私が廊下に出ると、既に3人はそこに立っていた。わざわざ呼びに行く手間が省けた。
ドアを開けたままで待っていると、彼らは静かに社長室に消えた。
1人取り残された廊下で呟いてみる。
『…完璧に仕上げたからって、優勝出来るとは限らない』
使い古された言葉だが、“ ステージには 魔物が住んでいる ” 。練習通りに歌やダンスが披露できたからと言って、優勝は確実ではないのだ。
その日のコンディションや、観客のテンション。もっと言えば、ライバルの調子でだって結果は左右される。
静かに目を閉じると、社長が彼らに檄を飛ばす声が聞こえる。
そんな声を聞きながら、私はこの1ヶ月に思いを馳せる。
勿論、優勝の確約などどこにも無い。
それでも、不思議な事に 自信しかないのだ。
彼らなら、絶対に完璧を超える。練習以上のものを本番で発揮するに違いない。
こんな根拠の無い自信を持ってしまっている自分が、なんだかとても らしく無くて。
込み上げてくる笑いを殺すために、口元に手を当てた。