第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
『衣装が届きました。袖を通して下さい』
午後20時。ブラホワ出場の宣伝活動から帰って来たばかりの彼らに、衣装の入ったケースを押し付ける。
「べつにいいけどさ、開口一番がそれなの?」
『………お疲れ様です。衣装が届きました。袖を通して下さ』
「分かった!急いでんだな!」着る着る!
楽の言う通りだった。
明日の朝一でも良いが、なるべく早く業者に サイズ等に不備がないかメールしておきたい。
サイズの変更がある場合はなおの事。
『私はこの会議室で待ってますので、衣装部屋に移動して着替えて来て下さい』
「急いでるんだよね?俺達は全然ここで平気だよ」
龍之介の笑顔が眩しく光る。
『そうですか。では私が他へ行きますので、その後に鍵を閉めて着替えて下さ』
「だから急いでんだろ?お前もここにいろよ」
『………喜んで』
「「「?」」」
なんたるご褒美展開。目の前でアイドルの生着替えが拝める機会が唐突に訪れた。
男装なんて面倒なだけだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
私の下心しかない視線を気にする事なく、どんどん下着姿に近付いていくメンバー達。
露わになっていく筋肉に、もっと心が躍ると思っていたのだが…
駄目だ。罪悪感の方が勝る。
意外と自分が律儀な性格なのだと思い知っただけだった。
『…はぁ』
「なんだよ、人の体見て溜息つきやがって」
不服そうに悪態を吐く楽。
私はくるりと体を回転させて、彼らに背を向けた。