第69章 お前さんのデート相手はここで待ってますよー
龍之介は、通常運転だ。問題なのは、天である。
仕事を休んでおきながら、こんなところで大和と待ち合わせしていると知って、怒っているに違いない…。
恐る恐る、上目遣いで天の表情を確認する。するとどうだろう。彼は、眩いばかりのエンジェルスマイルを浮かべていた。
「エリは、スーツも洋装も似合うけど。和服も似合うんだね。凄く綺麗だよ。まるでどこかのお姫様みたい」
『え…と、ありが とう?』
良かった。天は全然怒ってな
「でも、キミはお姫様じゃないよね。だってキミはTRIGGERの、ボクらのプロデューサーなんだから。
仕事を当日欠勤しておいて、こんな場所で何してるの?それも、二階堂大和とデート?冗談だとしても笑えないんだけど。
もちろん、ボクを納得させるだけの理由があるんだよね。さぁ、今すぐ説明してもらおうか」
怒ってないはずがなかった!!
満面の笑みではあるが、その台詞は辛辣だ。いやむしろ、笑っているからこそ恐怖が煽られる!
『い、いや、これには、カスピ海よりも深〜い事情が』
「そう。じゃあ今すぐに、1025mより深い その事情とやらを話して聞かせて」
「おい九条。そりゃ最深だろ。カスピ海の平均水深は208mだ」
「皆んな、なんでそんなにカスピ海について詳しいの…?」
若干引き気味の龍之介だが、多分その反応が正常だろう。
そろそろ、天に睨み付けられるのも辛くなって来た。と、その時。大和が私の腕を引いた。そして庇うように優しく肩を抱く。
「あのさぁ、この人の事あんまいじめないでくれる?
今日だけは、エリは俺のお姫様なんだわ」