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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ




私と楽は、上映ギリギリまで時間を潰す。あと5分ほど待てばちょうど良い具合だろうか。
ちなみにポップコーンは未購入。私も楽も、クレープを食べたばかりでお腹が膨れていたからだ。


「あんた、IDOLiSH7も好きなんだな」

『うん?』


ちらりと視線を隣にやると、むすっとした表情の楽がいた。心なしか唇を尖らせて続ける。


「TRIGGERのファンだって言ってたのに…」

『あ…!もしかして、楽 妬いてる?
あっはは、何ーもう!意外と可愛いんだから』


私は揶揄うように笑った。しかし、楽の顔には笑顔なんて浮かんでいなかった。
真剣な瞳が、こちらを捉える。


「妬くだろ、普通。余所見なんかしないで、俺だけ見てろよ」

『俺、だけ?TRIGGERは、3人でしょう?』

「悪いけど、言い直すつもりはないぜ。エリには、俺だけを見てて欲しい。
…なぁ。言ってる言葉の意味、分かるよな?」

『もう。また、それ?あはは…
な、何て答えれば良いのか分からないから…』

「…そんな、困った顔するなよ」


そう言った楽は、私よりも困った顔をしていた。私はそんな彼の腕を引いて、シアターへと導いた。


『ほら!そろそろ本編が始まる時間じゃない?中に入ろう?』

「あ、あぁ」


すると楽は、多少 無理くりにではあるが、笑顔を見せてくれるのであった。


遠慮がちに扉を押し、2人は室内に身を滑り込ませる。そして、最も後ろで 端の席に着く。
ちょうど予告編が、終盤に差し掛かった頃合いだった。

席に落ち着いて、上着を脱ごうとした時。私の耳元に、楽が唇を寄せた。


「ごめんな、こんな席で」


低く甘い声が ふいに耳をくすぐり、思わず立ち上がってしまいそうになった。
出来るだけ動揺を悟られないよう、わざと落ち着けた声で、大丈夫。と答えを返した。

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