第45章 私のところに、帰って来て欲しい
番組の締め、エンディングトークの収録が始まった。
スタジオには、総勢20組のアイドルが集まっているが、当然 全グループに話が振られるわけではない。
MCに話を振られるグループば、台本で全て決まっている。それこそ、Re:valeやTRIGGERといった 有名どころだけだ。
おまけで出演出来た身分の私には、関係のない話。そんな私に残された役目といえば、カメラに向かって 笑顔で手を振ることくらいなのだ。
「いやぁ、ノリノリだったねぇ!めちゃくちゃチェックズしてたよ!」
「本当ですか!?あははっ!昨日、寝ずにイメトレした甲斐がありましたよ!」
「それはもういいって!」
ビシっと百に突っ込みを入れる千。この2人には、感謝してもし切れない。
彼らが私の心を軽くしてくれたから、気兼ねなく歌う事が出来たのだ。
「レイニー&ブルー、良かったよ…。お客さんも、涙ぐんでた人多かったよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
「素晴らしい曲だけに、やっぱり少し緊張しちゃいましたけどね」
「確かに緊張もしたけど、凄く楽しかったです!」
Re:valeの2人だけでなく、TRIGGERのメンバーも 私を励まそうとしてくれていたのにも、気付いていた。
それに加えて…。
あの人。
中崎春人だ。
『……』
全ては、あの人が暗躍していたのだろう。
私には顔を見られまいと 距離を置いていたが、Re:valeとTRIGGERのメンバーを焚き付けたのは 春人だ。
スタジオの隅に立つ その人は、真剣な眼差しでTRIGGERを見つめていた。
私は、そんな春人を じっと見つめる。