第5章 看病のキス
任務が終わり家に向かってボーッと歩いていると、「カカシ!」と声をかけられる。
「よ!久しぶりだな」
「ゲンマ」
「任務帰りか?」
「ああ」とうなずくと、「これからみんなでメシ行くんだけど、一緒にどうだ?」とゲンマが近づいてくる。
面倒だし帰ろうとすると、返事も待たずに肩をがしっと組まれ、無理やり居酒屋の方へ連れて行かれる。
「ちょっ!?」
「お前、最近付き合い悪いぞ〜!
たまには来いよ」
千本を咥えて上機嫌のゲンマに引きずられて居酒屋の暖簾をくぐると、紅やガイがすでに席に陣取っていた。
「おっ!カカシ!」
「来る途中で会ったから連れてきた」
ニヤリとゲンマが笑う。
「無理やりでしょ。
明日も任務だし、すぐ帰るから」
「まぁ、そう言うなって」
渋々席につき、メニューから適当に注文する。
同期の集まりに参加するのは久しぶりだった。
オビトやリンが死んでからは特に……
「そういえばカカシ、最近妙にサクと仲いいじゃない。
この前もお祭り行ったんでしょ?」
話をふられ、急に現実に引き戻される。
「サクって、一個下のあの金髪の子?
確か今年から暗部だよな。
何?付き合ってんの?」
ゲンマが身を乗り出す。
「違うから。
あれは誕生日祝ってくれたお礼で、もう1人後輩も行くはずだったけど任務で来れなかったから、急遽2人で行っただけ。
お前らが思ってるようなことは何もないよ」
「ふーん。でも裏通りで手、繋いでたんでしょ」
紅がなおも食い下がってくる。
なんで知ってんの、と内心焦るが、顔には出さない。
「あれは下がぬかるんでて、あいつがコケそうになったから」
嘘は言っていない。
「へー。ふーん……」
ゲンマがニヤニヤ笑いながらジーっと見てくるから、視線から逃れるように横を向く。
「とにかく、オレは恋人とか作る気ないから」
自分の中に漠然とある思い。
大事な人を失うのはもうたくさんだ。
「カカシ……」
しんとなったテーブルに、「お待たせしました!」と場違いな明るい声が響く。
店員が飲み物や料理をドンドンっと置いていく。
「ま、とりあえず食べよ食べよ!」
空気を変えるように紅が明るい声を出す。