第21章 帰還
小さめのどんぶり一杯のうどんを平らげ、薬を飲んで歯を磨くと、サクが再びベッドに横になる。
熱ははまだ8度もあった。
明日が休みでよかった。
綱手様に感謝しなきゃな。
そんなことを思いながら食器を洗い、ソファーに座り愛読書を読む。
サクが寝ているので、ソファ横の小さな明かりだけをつける。
こういうとき、やっぱワンルームだと不便だね、どうも。
せめて、寝室とリビングが分かれている部屋に引っ越そうか……。
サクが帰ってきたら引っ越そうと思っていたが、お互い忙しく、なかなか部屋を見つける時間がなかった。
普段はほとんど家にはいないので問題はないのだが、こういうときは、やはり少し不便だ。
ま、何にしてもサクの仕事が落ち着いてからだ。
しばらくして、寝る支度を済ませベッドに潜り込むと、サクがいきなり抱きついてきた。
ビックリしたけど、熱い体にそっと手を回す。
「ゴメン……起こした?」
ふるふると首をふるサクの手に、さらに力が込められる。
「カカシ、ごめん、ごめんね……。
カカシはわたしに色々してくれるのに、わたしは自分のことばっかで何もしてあげられてないよね……」
微かに体が震えていて、泣いているんだとわかる。
オレはそっと小さな頭を撫でた。
「サク、オレはサクに何かして欲しくて結婚したわけじゃないよ……。
サクだから、結婚したの。
それに、オレは十分サクにもらってるよ。
一緒にいられて、サクの笑顔が見れたらそれで充分。
サクもそうでしょ?」
問われてサクが顔を上げる。
コクリと頷いた、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔はお世辞にも可愛いとは言えないのに、なぜか愛おしい。
ティッシュをわたしてやるとサクがチーン!と勢いよく鼻を噛んだ。
「ただ、体はもっと大事にしてほしい、かな……。」
うん、と頷くその頭をゆっくり撫でると、サクの体からくたりと力が抜けていく。
「……もう、なんでそんなに優しいの?
涙、止まらなくなっちゃうよ……」
「サクを甘やかすのはオレの特権だからね」
そう言うとオレは、胸のあたりに隠すように顔をうずめるているサクの頭に優しくキスをした。