第19章 帰郷
朝、いつもより少しゆっくり起きて、ふたりで朝ごはんを作って食べる。
トーストとハムエッグの簡単なメニューだけど、向かい合って食べるごはんはやっぱり美味しい。
「にしても狭いな」
部屋を見渡してカカシが言う。
一人暮らし用のこの部屋は、大きなベッドが部屋の半分を占めていた。
小さな食卓テーブルとソファもあるから、部屋がほぼ家具で埋まっている。
「確かに…」
「サクが帰ってきたら、もうちょっと大きいとこに引っ越そうか」
「うん!そうだね」
2人の未来の話をするのは、ちょっと照れ臭くて、でも嬉しいし楽しい。
ふふっと思わず笑うとカカシが不思議そうにわたしを見る。
「なんか今の会話、夫婦感あるなぁと思って」
「そう?」
ピンとこないのか、カカシが首をかしげる。
「うん。
結婚して結構すぐ別々になっちゃったから、なんか嬉しいこういうの」
「そっか」
カカシは嬉しそうに笑って、食べ終わった食器をキッチンのカウンターに置き近づいてくる。
「わっ!」
いきなりカカシの膝の上に横抱きにされて、浮遊感に手に持っていたコーヒーをこぼしそうになり、慌ててテーブルの上に置いた。
「でも、離れてても今でも、サクはオレの可愛い奥さんだけどね」
「っっ!!」
不意打ちのカカシの言葉に頬が熱くなる。
わたしが照れてしまうのはわかっていた、とでも言うようなイタズラな顔で見つめられて、悔しいけれどドキドキしてしまう。
「キス…して?」
息がかかる距離で囁いてカカシがゆっくりと目を瞑る。
わたしの旦那さんは、なんでこんなにわたしを虜にするんだろう。
抗えないよ……。
目を閉じて待つカカシの頬に手を添えて、そっとキスをする。
「帰ってきたら、飽きるくらい夫婦らしいことしよ」
「うん。でも、きっといつまでも飽きることないよ」
「確かに」
今度はどちらからともなくキスをする。
愛を伝えるように、角度を変えて何度も口付け合う。
頭を撫でたり頬に触れたりしていたカカシの手に、首筋や背中、脇腹を撫でられ、体がゾクリと泡立つ。
触れられたところから、体が熱を持っていく。
「サク……」
熱を宿したカカシの目がわたしを捉える。
耳をなぞられて、びくりと体が跳ねてしまう。