第19章 帰郷
冷たい風が外套から覗く顔を容赦なく叩く。
12月もあと少しで終わろうという今日この頃、雪こそ降らないが、底冷えする日が続いていた。
任務を終えたオレたちは、真っ暗な夜の森を里に向かって帰還途中だった。
あとはこのカバンに入った報告書を三代目のところに持っていけば任務完了だ。
オレは急いでいた。
なぜなら、今日サクが里に帰ってくるから。
明日から少し早い年末年始休暇をもらったらしく、3日間だけではあるが、久しぶりにゆっくりと過ごせるのだ。
距離の問題は想像以上に大きく、サクが里を出てから2人でゆっくり過ごせた日は、1、2日しかなかった。
サクに早く会いたいーーー
そう思ったとき、背後にかすかに気配を感じた。
まだ遠いけど、これは……
「ミチ、悪いけどこれ、頼む」
カバンから報告書の巻き物を取り出しミチに向かって投げる。
「え!?」
慌てながらもミチがそれを受け取ったことを確認すると、オレは踵を返して気配のする方へと駆けだした。
「何?アレ……」
「今日サクさん、帰ってくるみたいですよ」
呆然とするミチに、テンゾウが隣に降り立ち苦笑する。
「あ、そゆこと…」
ミチも察したらしく、いつもクールな隊長の愛妻ぶりに、2人顔を見合わせて笑った。