第17章 星空のプロポーズ
「サク、オレと結婚してください」
「え…けっ、こん?」
予想外の言葉に、思わず聞き返してしまう。
でも先輩はコクリと頷き肯定する。
「本当はもっと前から考えてたんだけど、サクの夢の足枷になっちゃいそうで言えなかった。
でも、サクが木の葉に帰ってきてくれるってわかったら、もう我慢できなかった」
真っ直ぐにわたしを見つめる先輩の真剣な想いが伝わってきて、胸が熱いもので満たされていく。
でも…。
「でも、わたし、5年もいないのに、先輩はそれでもいいですか…?」
「オレがずっと一緒にいたいのはサクだけだよ…。
サクだから、結婚したいと思ったんだ。
遠くにいても、オレたちなら大丈夫。でしょ?」
「……っ先輩…」
先輩がどれだけわたしを想ってくれているかを改めて思い知る。
そうだ…。先輩はいつだってわたしのことを全力で愛してくれた。
「それともサクはオレと結婚すんの、嫌?」
心配そうな先輩の声に、心がギュッと掴まれ、必死で否定する。
「やじゃないですよ!
嬉しい、すごく嬉しすぎて、言葉がうまく出てこなくて…」
心を落ち着けるために、深呼吸をする。
先輩が大好き。
断る理由なんて、わたしにはひとつもない。
そう思うと、ジワジワと幸せが頭の先から足の先まで駆け巡った。
なんだか、泣きそうだ。
嬉しくて、幸せで、全てが満たされていて。
震える声で、でも、しっかりと先輩を見上げる。
「先輩、ふつつか者ですが、よろしくお願いします!!」
ペコリとお辞儀をして顔を上げると、この上ない笑顔の先輩と目があった。
「ふふ。こちらこそ、よろしくね」
先輩はそう言うと、ポケットからゴソゴソと小箱を出し、開ける。
中には、小さなダイヤが真ん中にはまったシンプルな指輪。
「ホントはプロポーズのときに出すんだっけ…。
順番間違えちゃった。」
そう言って照れたように笑いながら、私の左手を取って、指輪を薬指にはめてくれる。
任務で多忙を極めてる先輩が、いったいいつ買ってくれたんだろう。
ピッタリと私の薬指にはまった指輪が、月明かりを反射してキラキラと光った。
「…きれい」
手を持ち上げて指輪を眺める。
幸せすぎても涙って出るんだな…。
いつの間にか頬を伝っていた涙を、先輩が指先で拭ってくれる。