第16章 サスケ
自分で思ってよりも強い声が出る。
でも想いを伝えたくて、膝立ちになり視線を合わせると、サスケくんの手を握る。
びくりと震えたその手は、払われることなくわたしの手の中に収まっている。
困ったようにサスケくんの視線が彷徨う。
「同情なんてされないように、強くなって、幸せになる道をこれからは探さなきゃダメ!!
まだ小さいんだから、大人を頼ったらいい!
1人じゃないよ?
少なくとも、わたしがいる。
お手伝い、させてよ…。」
最後は懇願するように、小さくなっていく声。
永遠みたいな沈黙の後、サスケくんがわたしの手を振り払うと、お弁当をむしり取り、あぐらをかいて乱暴な仕草で食べ始める。
呆気にとられているわたしをチラリと見ると、すぐに目線を逸らし、「これ食ったら豪火球の術、教えてくれんだろ。」とボソリと呟く。
「っ!!うん!!!」
嬉しくて満面の笑みでサスケくんの横に座ろうとすると、「近い。」と、あからさまに距離を取られた。
「ふふ、照れなくてもいいのに。」
「照れてない。」
黒い瞳をしかめて、それでもお弁当は食べ続けてくれる。
「ね、おいしい?」
面倒くさそうに一瞬わたしを睨み、でもお弁当に視線を戻し、「……悪くない…。」とサスケくんが呟く。
素直じゃないサスケくんのこの上ない褒め言葉に、わたしは笑みを一層深めた。
「そっか。」とだけ答えて、わたしはサスケくんとのこれからの修行の日々に想いを馳せながら、沈み始めた夕日を見すえた。