第16章 友が起きるまで 2
我妻光希になって……だと?
この子、ちょっとおかしなこと言い出したよ。
あれか?私がしんどいこと突きつけたからおかしくなったのか?
目をぱちくりさせて無言になる光希。
「いい案だと思ったんだけど、駄目か?」
「駄目とゆーか、……え?」
「え?」
「……よし、整理しよう」
「善逸は鍛錬、どうすんの?」
「自分でやる」
「サボるよね。絶対サボるよね」
「うっ……」
「家事はどうするの?」
「俺がやる。お前も料理できるだろ。子どもの頃一緒にやってた。洗濯も」
「状況が違う。任務をこなしながら出来るの?ここにはアオイさんがいてくれる。義勇さんのとこにも千代さんがいる。休息が大事な仕事で、自分たちでそれができる?」
「ううっ……」
「そもそも、私たちまだ子どもですけど」
「………」
「婚約も保留中だよね」
「………」
「夢半ばで、修行中の身。ほとんど独り身の鬼殺隊の中で新米隊士が妻帯するのは、」
「もういいよ…」
善逸は完膚なきまでに叩きのめされて涙目だ。
いや、すでに泣いている。
「ううう……俺はただ、一緒にいたくて。離れたくなくて…うぇぇん……」
しくしくと泣く善逸に、流石に可哀想に思う。
「……ごめん、言い過ぎたね」
「どうせ光希は俺と離れてもへっちゃらなんだ。喜々として冨岡さんと修行すんだ。俺ばっかり光希のこと好きで光希はそうでもないんだ」
拗ねた。
完全に拗ねました、これは。
「善逸」
「………」
「善逸、我妻善逸さん」
「…………何だよ」
「家、借りよう」
今度は善逸が目を丸くする。
「え……」
「基本は空き家になるけどね」
「……でも」
「休みの日が合った時だけ、そこでゆっくりしよう。一緒に生活するのは無理だけど、二人きりで過ごせる空間にしよう」
「……えっと…」
「良い案だと思ったんだけど、駄目?」
「駄目じゃないっ!」
善逸が大きく反応する。