第6章 曖昧なグレーゾーン
――フツウってなんだっけ?
黒崎君とは付き合ってない。
だって、黒崎くんは私の事好きじゃないし・・・。
そうだよ。
一番最初に、好きにならないって言われてるし。
私も、黒崎君の事・・・恋愛対象として見てない。
・・・・大切な人だけど。
黒崎君が誰かと付き合うって言ったら、私きっとその人とのこと応援できるし・・・。
そう、応援できる。
だから、さっき教室でマフラーだって鞄の下に隠したんだもん。
私は黒崎君の事・・・・
・・・・・・・・・・・・好きじゃない。
黒崎君も私の事・・・・
・・・・・・・・・・・・好きじゃない。
白でも、黒でもない。
曖昧なグレー。
そういう関係はきっと神代くんのいう「普通」じゃないのだろう。
なんでも受け入れて話を聞いてくれる黒崎君とは対照的に、自分の中の「普通」以外を否定するような言い方をする神代君の考え方に雪菜はいつも戸惑う。
マフラーを鞄の中にしまうと同時に、目に着いたピンクのうさぎもそっと外して一緒に入れる。
ふと顔を上げると、黒崎君と目があった。
「ソース・・・まだついたままですよ。」
黒崎君はぼそっと呟いて、親指で私の頬をなぞる。
その手を、自分の口元に持っていった・・・
私の目はその手を追う。
彼が何をするのか気付きながら・・。
それは・・・・スローモーションのようだった。
・・・・。
黒崎はじっと見つめる雪菜の視線に気付いて、途中で手を下に降ろし机のおしぼりで指をぐっとぬぐった。
はっとする雪菜の顔を見て、少し悲しそうに笑い、消え入りそうな小さな声で「大丈夫だよ」と言う。
何が?何が大丈夫なの?
そう聞こうとした時、
急に黒崎が大きな声を出した。
「早瀬さんは神代のこと好きだよね?」