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メメント・モリ

第6章 曖昧なグレーゾーン


2限目は学年全員が受ける授業。

コロシアムが半分に斬られたような大きな教室を初めてみた時は、これが大学生か。なんてそんなところで実感したものだ。

いつもの一番後ろの一番高い席で4人並んでいると、黒崎くんと神代くんが入ってくるのが見えた。


「おーい!」


ぶんぶんと有香が満面の笑みで2人に手を振る。

ぱっと振り返って、小声で「今日も、神代くん格好いい!!」なんて私たちに報告までする。




何人かの女子が、神代くんと黒崎くんをみてはこそこそ話し、その後に有香を見てこそこそ言っているのが見える。

「・・・有香、めちゃくちゃ注目あびてるし。あれ?黒崎くんのマフラーって雪菜のと一緒じゃない?」広子が私のほうを見る。


雪菜の鞄の上に巻かれてるマフラーは、黒崎の首にあるものとまったく同じだ。


「ピンクのあれも一緒じゃない?」と有香。


ビビットピンクのうさぎが黒崎君の腰元で揺れてる。


「うん、昨日一緒に買い物行ってきたの。」


「本当にお揃いのモノばっかり買ってるんだから、仲いいよねー。」その有香の声は少し呆れている。


前は、お揃いのものを買うたびに広子が『わけがわかんない!』って言っていたけれど、最近は広子もなにもいわなくなった。


「・・・これで付き合ってないんだからなぁ。まぁ、黒崎くんにとってはいい女よけにはなるのかもしれないけどね。」

そういう広子に、有香がきょとんとする。


「女よけ?」


「そうだよ、黒崎君ってイケメンじゃん。」


「えー!?広子ああいう趣味なの?」


「有香は神代くん!神代くん!って言ってるから気付いてないだけでしょ。黒崎くんのこと今日にでもちゃんとみてみたら?ね、雪菜。」


急に話を振られて、雪菜は言葉に詰まる。

眼鏡を掛けていたって、黒崎君の格好よさに気付くひとは居るんだ・・。まぁ、当たり前か…。

今まであまり考えてみたことはなかったけれど、黒崎くんのことを好きな女の子だっているのかもしれない。

そんな女の子にとって私はどう映るのだろう。

その恋の邪魔をしてはいけないような気がして、鞄の上に置いてあったマフラーを鞄の下に隠してみる。


ざわざわしている教室を見渡して、黒崎君に視線を送る人が居ないかをなんとなく探してしまう雪菜だった。
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