第10章 どこにも行けない想い
ピッ…
と音がして部屋の電気と同時にテレビも切れた。
それまで聞こえてなかったエアコンの運転音が耳につく。
カーテンの隙間から差し込む月明かりがにじんだ目に綺麗に映った。
一瞬にして変わった闇の世界に、
雪菜はへたりと座り込む。
「そんなに、神代のこと好きだったんですか。」
・・・長い沈黙。
「・・・うん。」
私は、白状した。
私は、彼を失いたくなかった。
神代君との時間は多くはなかったけれど、
神代君を含めて皆で過ごしてきた1年間は楽しいものばかりだった。
皆で一緒に勉強したり、カラオケに行ったり・・一緒にごはん食べた。
お兄ちゃんのように、気にかけてくれてた神代くんが優しくて嬉しかった。
きっと、全てが変わってしまうのだ。
「素直、ですね。」
暗闇の中、声で黒崎君が微笑んでるのが分かる。
「嫌なの。」
――――好きになられたのが。
と、心の中で言って、なんて最低な人間なんだと思う。
「なにが、嫌、なの?」
ゆっくりと私の頬に手を添えて、親指で涙をぬぐった。
低い、声。
じわじわと、追い詰められていくような感覚が続く。
「・・・好きになってほしくなかったの。」
口に出してますます息を吸うのも嫌になった。
それを見透かしたかのように、
黒崎君は私の口を塞ぐようにキスをする。
林檎チューハイの味が口っぱいに広がった。