第98章 初めての共闘
水琴の能力で予定より二日も早く着いた町、ファナン。
船を港へ止め、二人は通りを歩いていた。
この辺りでは一番大きい町なのだろう。通りは綺麗に整備され、道行く人は住人だけに限らず別の町から卸しに来た行商人なども多いように感じられた。
立ち並ぶ店を物珍し気に眺めていると等間隔で並ぶ意匠に気付く。最初は何だろうと思っていたが、マルコから聞いた話を思い出しあれがなんなのか見当がついた。
あれはこの辺りを治める領主の意匠だ。
つまりこの町は領主の直轄地であるということになる。
どうりで町の整備も整っているわけだ、と水琴は一人頷く。
だがそれならば一際用心しなければならない。直轄地であるということはその分駐在も多く派遣されているだろうし、海軍基地もあるかもしれない。
あまり目立たないに越したことはないだろう。水琴は前を行く背中に話し掛けた。
「ねぇエース。ここには何の用事があるの?」
「換金と買い出しだな。ここら辺であれだけの量のお宝を換金出来る店は他にないし、食料も尽きてきたから補充しねェと」
スラスラと淀みなく返ってきた答えとその内容に水琴は軽く感動を覚える。
どちらかというとそういうことを考えるのはサボの役目だった印象だが、彼もそこまで考えられるようになったのか。
足元を見てこようとする換金所の店主相手に交渉し(やや脅していたところには目を瞑ろう)きっちり正規の価格で手続きを済ませたエースの後をついて歩きながら水琴はまるで子どもの参観を見守る保護者のような心持ちとなっていた。
既に十七歳であるのだからそれくらいは当然なのかもしれないが、水琴にとってみればついさっきまで十歳だったのだからそんな気分になるのも当然だろう。