第88章 風邪には甘いレモネードを
どうやら皿への被害は免れたようだ。ほっと息を漏らしたサボの耳にガチャンと嫌な音が届く。
「__ってお前かエース」
「わり。手が滑った」
皿洗いをしていたエースの手には綺麗に真っ二つに割れた一枚の皿。
普段皿洗いなどしていないため、洗剤で手を滑らせたようだ。
「気をつけろよ」
「大丈夫大丈夫、コツは掴んだ!……あ」
がしゃん、と更にもう一枚。
「おかしいな。これくらいの力加減だと思ったんだけどな」
「お前素直にゴム手袋使え!」
なんとか机を片付け、床へと取り掛かる。
箒でゴミを集め綺麗にしてから三人は絞った雑巾をそれぞれ手に持った。
「誰が最初に一番端までつけるか競走しようぜ」
「いいな!おれがいっちば~ん!」
「あ、ルフィ待て!」
代表して箒を片付けようとしていたサボは嫌な予感しかせず呼び止めるが、飛び出したルフィは急には止まれない。
案の定勢いづいたルフィは床のでっぱりに足を取られ盛大に横転した。
ぼよんと大きく跳ねたルフィが壁に激突する。
ばきゃっ!!
「あーあ……」
「何やってんだよルフィ」
「転んだ」
「見りゃ分かる」
壁にヒビが入る衝撃にもかかわらずケロリとした様子のルフィに溜息を吐く。
「お前らなぁ!俺たちは掃除してるんだぞ?これ以上散らかしてどうする__」
ガタッギィ__バサッガシャシャシャ……
サボが振り回した箒が飾り棚に当たり、緩んでいた留め金がその衝撃で外れる。
斜めに傾いた棚から積んであった物が落ち、酒瓶を倒し、割れた破片が辺りへ散乱した。
酒浸しになった小麦粉の袋の口が緩みべとついた粉は床に落ち、免れた粉は白く周囲の壁を汚す。
「………」
「サボが一番酷いな」
固まってしまったサボにエースの容赦の無い追撃が入った。