第80章 それぞれの青い鳥
「天気雨なんて珍しいな」
何も遮るものもない空から降る雨粒を手で受ける。
もっと酷い雨ならば雨宿りも考えたが、これくらいならばすぐに止むだろう。
服も僅かに濡れるばかりで逆に心地良いくらいだ。
アイツは大丈夫だろうかとエースは水琴がいるだろう大木の方向を見る。
突然降られて驚いている様が目に浮かぶようだ。
様子見に行ってやろうかな、とぼんやりと思っていると隣であぁぁ!!とサボの馬鹿でかい叫び声が上がった。
「思い出した!」
「何を」
「青い鳥だよ!そうだ、やっぱ水琴だったんだ!」
そうだそうだ、と一人納得しているサボに何やら面白くない感情が浮かびエースはムッとする。
「何が水琴なんだよ」
知り合ったのは自分の方が先なのに、なぜエースの知らない水琴のことを知っているのだろう。
いつの間にそんなに仲良くなったのかともやもやしているエースには気付かず、サボは明るい表情でこっち来いよ!と走り出した。
「あ、おいサボ!」
「こっちこっち!」
どこへ行くのかと追っていけばグレイターミナルが見えてくる。
ゴミやガラクタが散乱している中を進んでいけば、サボが根城にしている小屋へと辿り着いた。
中をゴソゴソと漁っていたサボはこれだ!と一冊の本を取り出す。
「水琴から教えてもらった話とかをまとめてんだけどさ、その中に青い鳥の話があったんだ」
「そんな話されたことあったか?」
「お前途中で寝るから」
失礼な物言いをするやつだ。
おれだって興味のある話は最後まで聞く。ただサボと話す時の水琴は大抵難しい話が多いから飽きるだけだ。
だけど少し思い出してきた。確かに青い鳥の話は聞いたことがあった。