第79章 サボ
海賊を目指すと言ったサボに一度だけ水琴の話をしたことがあったのだが、それに予想以上に食いついたサボは当初から会ってみたいとエースに言い続けていたのだ。
それをなんだかんだ言ってエースは避けてきた。
理由は簡単。気恥ずかしいからだ。
サボにはブルージャムのような奴ではない、本物の海賊になりたいと常日頃豪語している。
頭のいいサボのことだから、エースが言う本物の海賊が水琴だと会えばすぐに分かるだろう。
初めてできた同年代の、もう相棒といっても差し支えない存在に自分が憧れる存在を直に見られるのはなんというか、気まずい。
「いや、あいつもさ、今は山賊見習いだろ?だからやること多いらしくてさ。なかなか時間取れないんだよなー」
それ故エースは今日もごまかす。
内容は少々わざとらしいが三週間も続けているのだからそのあたりは勘弁してほしい。
「まァあいつも近いうちに会いたいって言ってたし、そのうち来るんじゃねェの?
あ、いや、分かんねェけどな?」
さすがに怪しまれたかとちらりとサボの方を伺えば、なぜか彼の目はエースを通り過ぎた背後に注がれていた。その口はぽかりと大きく開いている。
「……?おいサボ、どうし__」
「へー。そうなんだ」
「どゥわっ?!」
背後から聞こえた声に思わず肩が跳ねる。
勢いよく振り返れば、そこには逆さまの状態で空に浮く水琴の姿があった。
いつもは優しく細められる目が今日はなんだか怖い。