第78章 楽しい休日の過ごし方
「この辺りってダダンさんの縄張りじゃないの?」
「ちょっと離れてるからな。別の奴らだろ」
面倒事に巻き込まれエースは不満そうだ。
こちらとしてもせっかくの楽しい休日を山賊で締められるのは味気ない。
それに目の前で怪我人が出るのもどうも気分が悪い。
「ま。ちょうどいいや。暴れてやるか」
「あ、エースは待機ね」
「はっ?!」
「その服、少しでも破ったり汚したりしたら弁償だから」
「………卑怯だろ!」
「鉄パイプもないからやりにくいでしょ?ここは私に任せて」
ね?と念を押せばエースは渋々頷いた。
馬車の幌が開けられる。
獲物をいたぶろうとほくそ笑んでいた山賊は、突如顔面に食らった衝撃にもんどりうって倒れた。
馬車を覗き込んでいた仲間が勢いよく後方に倒れ込む様子を見て周囲の山賊はざわつく。
「__早く帰りたいんで、そこどいてもらっていいですか?」
腕をまっすぐ伸ばした水琴が馬車の中から丁寧に”お願い”する。
「な、なななんだてめぇ……!」
「ただの乗客です。日が暮れちゃうんで、早く帰りたいんですけど」
ひらりと馬車から飛び降りた水琴のいでたちに山賊たちは呆気にとられる。
どんな奴が出てくるのかと思えば、ひらひらのワンピースで着飾った女が出てくればそうなるのも仕方ないだろう。
__だが、そんな反応をしてしまうというだけで、彼らの技量はたかが知れている。
「ふざけんな!おままごとじゃねぇんだよ、お嬢ちゃんよ」
「お前こそ、怪我したくなきゃあ大人しく__」
最後まで言えずに山賊は後方へ吹っ飛ぶ。
水琴の生んだ風がワンピースの裾を優雅に揺らした。
「__私も、何度も言いませんよ」
それはそれは楽しそうに、水琴は笑う。
「そこ、どいてもらっていいですか?」