第71章 世界を照らす一筋の光
「………」
ふう、とエースが息を吐く。
「やっぱ水琴ここ使え。おれはどうにかするから」
「え……」
「焦らせちまってごめんな。けど、そんなに無理に進もうとしなくたっていいんだよ」
ぽん、と頭を優しく撫でられる。
顔を上げれば困ったような笑みのエースがいた。
「そんな切羽詰まったような顔、させたい訳じゃねェんだ」
その表情に、ずきりと胸が痛む。
あぁ、まただ。
また私は、エースを傷つけてしまっている。
これでは恥ずかしさから逃げ回り、エースの気持ちを蔑ろにしてしまった時と何も変わらない。
嫌か、嫌じゃないかで言えば、水琴の気持ちは決まっている。
__あんたは、難しく考えすぎる。もっと、心に素直になればいいんだよ。
恥ずかしいとか、がっかりされたらとか。
そんな上辺の気持ちに振り回されて、一番大事な気持ちに果たして水琴はきちんと向き合っていただろうか。
水琴に背を向け、扉へ向かうエースの腕をくっと引く。
振り向いたエースに向かって、精一杯身体を乗り出した。
唇に熱が触れる。
離れ、目を開ければ驚いたエースと至近距離で目が合った。
「__好き」
ぎゅ、と抱きつく。
胸を焦がす温もりが冷えていた水琴の身体に熱を灯す。
「エースと一緒に、色んな景色を見たい。美味しいものを食べて、笑って、時には喧嘩して、仲直りして。
楽しいことも苦しいことも、全部エースと一緒に積み上げていきたい」
この世界に落ちてきてから今まで。
ずっとずっと、傍らにいてくれたみたいに。
これから先もずっと。
「エース」
顔を上げる。
「私に新しい世界を見せて」
他の誰でもない、貴方じゃなきゃ嫌だ。