第71章 世界を照らす一筋の光
「バランスはどうだ。立てるか?」
「問題ないよ、大丈夫」
「帆の操作はこっちの縄だ」
軽く説明を受け、水琴は一人縄を握る。
水琴が生み出した風が帆を膨らませ、船は緩やかに走り出した。
「すごい!走りやすいよウィリー!」
浮きのおかげでバランスもとりやすい。かと言って転回を妨げるわけでもなく、水琴の意のままに船は右へ左へと向きを変えた。
しばらく浅瀬を思うがままに走り遊んでいればウィリーが大声で呼ぶ。
「その様子じゃ大丈夫そうだな」
「うん、もう完璧!」
「次は陸地だな。ちょっと砂浜滑ってみろ」
言われ船を砂地まで引き砂ぞりのように走らせる。
先程はバランスを取るために機能していた浮きが船体を持ち上げ接触面積を減らすことで、砂地でも抵抗なく走らせることができた。
どうやら船体の底には小さな車輪もついているらしい。これなら砂だけでなく固い地面でも船を傷つけることなく走ることができるだろう。
「よくこんなの考え付いたね」
「お前らが乗ってきたあの燃料船見てたら、こうむらむらとやる気が湧いてきてな。まだまだ若造には負けてらんねぇよ」
どうやらリオの技術に触発されたらしい。
きっと彼女がこの船にやってくることがあったら意気投合していたんだろうな。
元気にしているだろうかと発明家の少女を思い出し、水琴はくすりと微笑む。
「あとついでの機能だが、ここの板を引っ張って布を出せば幌になる。突然の雨とかにも対応できるし、まぁ目隠しにもなるから船の上で休みたい時には使え」
「そんな機能まで……!」
至れり尽くせりとはまさにこのこと。
さすがウィリー。使用者に合わせ最適な機能を付けてくれる、まさに職人の鏡!
「気に入ったか?」
「もっちろん!」
「じゃあ名前を付けてやってくれ」
まだ考えてねぇんだ、と言われ水琴は新たな相棒をじっと見つめる。
金と緑の装飾に彩られた美しい船に、浮かんだ名は。