第70章 一進一退……?
「__ふふ」
突如逃走劇に巻き込まれてしまった水琴はエースの腕の中で笑う。
「どうしたんだよ」
「やっぱり、いつも通りだなと思って」
水琴の言う通り、どうやらどれだけ決めようと思っても結局はこうなるのが運命らしい。
「エース、ちょっとごめんね」
腕の中から身を乗り出し、肩越しに水琴が背後を振り向く。
「何する気だ?言っとくけど少しでも壊したら即出禁だぞ」
「大丈夫。……加減は得意だから」
すい、と指を振る。
生まれた風は追ってくる海賊の足をすくいとり、もつれさせた。
倒れる海賊に巻き込まれるかと思えば、警備ロボットは別の風で空に舞い上げられ草むらへと落ちる。
「どーよっ!」
「水琴、ナーイス!」
「うまいもんだなァ」
感心するのも束の間、倒れた海賊を乗り越えるように今度は別の警備ロボットが現れる。
「「「………」」」
一同はゆっくりとそれを仰ぎ見た。
頭上高くで点滅するモノアイがエースたちを捉える。
「でかい!無理!」
「結局逃げるのか!」
「船まで行けばなんとかなる!みんな頑張れ!」
即座にまた走り出した面々に交じり、水琴は楽しそうな悲鳴を上げた。
「なんだか通りが騒がしいな」
「気にすんなよい。どうせどっかの馬鹿が暴れてやがんだろ。それより親父、もう一杯どうだ?」
「グララララ、貰おうじゃねェか。
__やっぱり、息子に注いでもらう酒が一番うめえなァ」
「親父、俺の酒も飲んでくれ!」
「オレも!」
通りを挟んだ別の店で。
息子たちの騒動には微塵にも気付かず、白ひげはマルコらと静かに酒を嗜んでいた。