第60章 目指せアルバーナ
背後から伸びる腕が水琴の身体を引き寄せる。
目の前で水琴を引きずり降ろそうとしていた腕が炎を纏い消えた。
「エース……?」
「あら、失敗しちゃった」
咲いていた腕を握りつぶした手をそのままにエースは冷ややかな視線を前方へ向ける。
エースの視線の先には女とクロコダイルの姿があった。
女の静かな目が水琴を見つめる。
「せっかく異世界の民《貴重な資源》を手に入れるチャンスだったのに」
「__っ」
「………」
「ルフィさん!」
ニコ・ロビンの言葉に水琴は息を呑み、エースはすっと目を細めた。
そんな二人の横でビビが叫ぶ。
見ればちょうど水琴達とクロコダイルの中心にルフィが倒れこんでいた。
どうやらビビを引き寄せ代わりに落ちたらしい。むくりと起き上がる様子に怪我はなさそうだと安堵する。
「お前ら先に行け。おれ一人でいい!」
「ルフィさん、でも…!」
「ビビを宮殿まで送り届けろよ。絶対にだ」
クロコダイルへと向き合ったまま力強くルフィが発する言葉に誰も動けない。
本当は助けに駆け寄りたい。
しかしそれをルフィの背中は決して許していなかった。
「__侮られたもんだ。たかだかルーキー一人でどうにかなると思われるなんざ」
クロコダイルが低く笑う。その笑みは瞬時に消え、暗い殺意がルフィへ向けられた。
「少々ふざけが過ぎたな。“麦わらのルフィ”…」
「…っルフィ、私も…!」
「水琴はだめだ。こいつらお前のことも狙ってる」
向けられる殺気に思わず叫べばルフィにすぐさま拒否される。
ルフィ越しにクロコダイルと目が合えば、ぞくりと総毛だった。
__あの瞳は知っている。
“喰らう者”の眼差しに恐怖の記憶が呼び起こされ、自然身体が震えた。
そんな水琴を庇うようにエースが半歩前へ出る。