第54章 友達だから
「さて、じゃあ行くか」
「あ、エース……」
用は済んだとストライカーへと向かおうとするエースを呼び止める。ん?と振り返るエースになんと言おうか一瞬迷う。
「……どうした?」
「エースが、すごく大変な思いをしてここまで来てくれたのは感謝してる。だけど、お願い。
……もう少し、この船に居たらダメかな?」
「__それは、どういう意味だ?」
空気がしんと静まり返る。
エースの雰囲気に呑まれないように、水琴は今までの経緯を話す。
ビビのこと。今置かれている状況。
そしてこれから麦わらのみんなが何をしようとしているかを。
「エースやモビーのみんなのことを考えたら、すぐに戻る方がいいって分かる。だけど、知ってしまった今、私だけこの船を下りるなんてできない…」
「水琴さん……」
水琴の想いにビビが小さく呟く。
「お願いエース」
「………」
黙ってじっと聞いていたエースが目を開く。
「……水琴の言い分は分かった。
で、お前はどうしたいんだ?」
「え……?」
「水琴、おれ達は“白ひげ”だ。おれが言いたいことは分かるか?」
エースの言葉に息を呑む。
そして小さく頷いた。
分かっている。
私やエースは白ひげで。
ルフィ達は麦わらだ。
それぞれの冒険に、口出し無用。
それが海賊の掟。
これが、白ひげ傘下の海賊団となれば話は別だろう。
しかし、麦わらはどこにも属していない発足したばかりのルーキー。
そこに白ひげの隊長クラスが手を貸すということは。
白ひげが、麦わらの一味に対して手を貸すということと同義なのだ。
おまけに今回は国が絡んでいる。
四皇の一人がある国に介入する。
そのことが世間に知れれば、国側に対しても都合の悪いことが起きることは想像に難くない。
足に刻まれた白ひげのタトゥー。
それは誇りであると同時に、“枷”ともなる。
大きな影響力を持つ者は、勝手な感情で動いてはいけないのだ。