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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第51章 空に舞うは桃色の雪





 ***



 武器を持ちチョッパーを追い掛けるDr.くれはから逃げるという一悶着もあったが、何とか無事に海へ出た水琴達。


 「寂しい?チョッパー」


 じっと離れていく島を見つめ続けるチョッパーに声を掛ける。


 「…寂しいよ。ドクターやドクトリーヌと一緒に過ごした島だ」

 
 視線は前に向けたまま、チョッパーは答える。

 
 「でも、ルフィ達と一緒に俺は海へ出るって決めたんだ。ドクトリーヌには、悪いことをしたと思ってるけど…」


 最後引きとめられたことを引きずっているのだろう。声は段々と小さくなり、俯いてしまった。


 「ドクトリーヌ、俺のこと恨んでるかな…」
 「そんなわけないよ」


 間髪いれずに否定する。

 
 「でも、言ってた。お前は恩を仇で返すのかって」
 「くれはさんの人柄は、チョッパーが一番よく知ってるんじゃないのかな」

 言葉はきついが、その心根は優しい。

 私よりもずっと長い付き合いのチョッパーは、それでも不安を消せない。 


 そんな二人の前。

 暗い空に、明るい光が灯った。


 それは破裂音を上げ、次々と空へ打ち上げられる。
 


 「何……?」


 ドラムロックの頂上をもやが覆う。

 それは次第に広がり、十分な量になった頃突如光り輝いた。


 ライトアップに照らされ、闇に浮き上がったのは巨大な桜。


 チョッパーの目が大きく見開く。

 そして、大粒の涙が溢れ、落ちた。




 その様子を隣で黙ってじっと見つめる。




 恨んでいるわけなんて無い。 


 だとしたら、目の前のあの桜はなんだというのだ。





 言葉が、態度が、どんなに分かりづらく不確かであったとしても。



 白一色に覆われた島に鮮やかに咲き誇る桜が彼女の、いや、”彼女たち”のたった一つの想いを明確に伝えている。











 シスターの優しい笑顔を思い出す。
 モビーディックのみんなを思い出す私に、本当の気持ちを教えてくれた。

 泣いて謝る私を、黙って抱きしめてくれた。


 もう二度と会えないと知っていても、「行ってらっしゃい」と笑って送り出してくれた。



 「綺麗だな」



 二人の医者の手によって完成された奇跡は、今涙を流し島を出る一人の息子をじっと見送っていた。


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