第38章 特訓!カゼカゼの実
「あぁぁできない……!」
数日後水琴は転がる無数の空き瓶に埋もれていた。
見られては気が散ると船尾に近い通路の一角を特訓スペースとして使っているため、散らかしていても咎めるクルーはいない。
しかし誰もいないというのは逆に特訓に一人で向き合わなければならないということで、いつまで経っても進展しない状況に再び頭が煮詰まってくるのが分かった。
町で手に入れた辞典を使い操る風に名前を付けたことで、今まで漠然としていた風の操り方を統一できたのは良かった。
しかしそれと命中率はまた別らしい。
「突風って名前がいけないのかなぁ…」
風を起こし対象にぶつける技は最初に思いついたものだが、空き瓶のような小さなものだけを狙うには少々大きすぎる技な気がする。
自分の中で突風に対するイメージが大きなもののせいで、どうしても小さくできないのだ。
他に適したものはないだろうかと開きっぱなしの本をめくる。
「矢風…」
矢を飛ばすときに周囲に起こる風の名称。
小さいものを狙うなら矢は適任だ。
試しに頭の中に矢をイメージしながら風を生む。
手に生まれた風は今までよりも形状を変え、やや細身の風が舞った。
一歩進んだ感覚に、水琴は忘れないうちに更に風を生む。