第37章 空と海の境界で風は踊る
「………」
「……エース?」
しばらく待っても反応がない様子に少し不安になってきた水琴は恐る恐るエースの顔を覗きこもうとする。
伝えたあと、俯いてしまったためエースの顔は髪に隠れてよく見えない。
ばさぁ!
「??!!」
突然被せられる布団。
上半身を起こしていた水琴はその重みに呆気なくベッドに沈み込む。
「ちょ、何?!」
「病み上がりだろ、もう寝ろ」
「え、いやもう平気…って息苦しいから!」
頭の先まで布団で覆われてしまっているため少々息苦しい。やっとの思いで布団を外し、エースを見れば彼はすでに向かいのベッドに潜り込もうとしていた。
「ちょっとエース!」
「疲れた、寝る」
「寝るのはいいんだけど…」
まさかのスルー?!
こっちは勇気を出して伝えたのに、若干悲しい。
しかしこちらに背中を向けるようにベッドに入ったエースの耳が面白いくらいに真っ赤だったから、文句を言うのはやめた。
「ねぇエース」
「あんだよ」
「次島に着いたら、一緒に上陸しようね」
「……おう」
しばらくして聞こえる寝息と、覗く二組の視線。
「…やばい、かわいい。何あの二人…!」
「あんま声出すなよい。起きちまうだろ」
「だってよぉ!“生きていけない”なんてすっげー殺し文句!あれが無意識なんだから罪だねぇほんと!エースもエースでなんであんな風にスルーしちゃうかなぁ馬鹿だろほんと!」
「あーいいから!さっさと行くよい!」
甘い雰囲気にテンションが上がるサッチと、それをずるずると引きずっていくマルコがいたことを、二人は知らない。