第24章 託された想い
かつり、と建物の影からイゾウが現れる。
そこに水琴達の姿を見つけイゾウは何やってんだお前ら、と呟いた。
「イゾウ!」
「なんでお前がここにいんだ?」
「俺はダチに会いに来ただけだ。昨日言ったろ。尋ねたけど留守だったって」
「……お前ら知り合いか」
「喜助。こいつらは俺の家族だ。心配いらねェよ」
イゾウの言葉にそうか、とようやく男__喜助は警戒を解く。
「イゾウの家族とは知らず、悪かったな」
「いや、勝手に入ったおれ達も悪かった」
「立ち話もなんだ。中に入ってくれ」
喜助に案内され建物の中へと入る。
通された客間では先程までイゾウと寛いでいたのだろう。まだ湯気を立てた湯のみと茶菓子が置かれていた。
水琴達の分も用意しようと喜助が廊下へ消えるのを待ち、イゾウは口を開く。
「__で、お前らなんであんなとこに居たんだ」
「それが……」
水琴は今朝からのことを話す。
通りで例の歌を聞いたこと。その歌の主が先程の少女だということ。
その少女を追ってここまできたこと。
「へェ。あのチビがねェ…」
「…ねぇイゾウ。あの子って…」
「異世界の民かって?いいや、違うな。あいつが生まれた時のことは俺も知ってる。間違いなくこの世界の人間だ」
「じゃあ、なんであの歌を…」
「__本人に聞いてみればいいんじゃねェ?」
エースの言葉にえ?と顔を上げる。
ふすまの影から小さな瞳が部屋の中をじっと覗きこんでいた。
いきなり視線を向けられ少女はびくりと肩を揺らす。
「あー、逃げんな逃げんな」
咄嗟に逃げようとした少女をイゾウが呼び止める。
「ハル、ちょっと来い」
ハルと呼ばれた少女はイゾウの言葉におずおずと部屋へと入ってきた。
ててて、とイゾウに近寄りその膝に収まる。
「可愛い………!」
「落ち着け水琴。また逃げられるぞ」
「なァハル。このお姉ちゃんがハルの歌ってた歌のこと知りたいんだってさ。教えてやれるかい?」
イゾウの言葉にハルはこくんと頷く。
「どのお歌?」
「えっと、昨日歌ってたやつなんだけど…」
「分かった」
ハルはすぅ、と息を吸いイゾウの膝で歌い始める。