第6章 春の虹
ケーキに続いて出してくれたアイスクリームは、なんと相葉さんの自作らしくて、俺は再び驚いた。
「そんな大層なことじゃない。意外と簡単につくれるんだよ」
相葉さんは、朗らかに言ってのけるが、こないだのコロッケといい、キッチンに立つことがほんとに好きじゃないと、こんなにいろいろできやしないだろう。
売り物のようなバニラアイスは、口の中でほどけて、ふわりとレモンの風味がする。
「美味しいです…」
「ほんと?よかった」
相葉さんは、にこりと微笑み、パクパクと美味そうに食べた。
そんな彼を見ながら、スプーンを口に運び、思う。
………これ、あの人にしてきたことなのだろうな。
カウンターに飾られた写真に、そっと目をうつす。
相葉さんの亡くなった恋人が微笑んでる。
相葉さんは、いい意味で相手につくしそうなタイプだ。
その人が心地よく、喜ぶことを、自然とできる人だから。
だって、ただの後輩の俺にですらこれだもの。
パートナーであるあの人とは……そうだな、毎日きっと相葉さんの愛がこめられた食卓を囲んでいたのだろう。
………………
…………なぜだか、胸がチクンとした。