第6章 従順※
「…!んっ」
突然のことに何が起きているのか理解するのに時間がかかった。
キスされているのかと気づけば、今度は彼は舌を入れてきた。
口内を犯されるような激しいキス。
私にはどうして彼がそんなことをするのか分からなかった。
「あの男とのキスは随分と気持ちよさそうでしたね」
やっと唇を離してもらえたかと思うと彼は私の目をじっと見つめてそう言った。
「どうして…」
「僕がそれを知っているのか、ですか?
そんなの僕がその光景を見ていたからに決まってるじゃないですか」
彼はあのパーティーに来ていたというのか
それよりも彼とのキスを見られていた、と
「そんな男を誘うような服を着て、あの男に抱かれるつもりだったんですか?」
「なっ…」
「あの男もあなたの腰に手を回していましたしね」
腰に手を回す…?
たしか、それはシャンパンを取りに行った時に…
「もしかして…」
「分かりましたか?あの時はシャンパンを譲って下さってありがとうございました」
─あ、あの、顔に何かついてますか?─
─あ、すいません、随分とお綺麗な人だったのでつい─
あの時シャンパンを譲った男性は、
安室さん…。
「キスだけであそこまで声が出るんですね。そんなに良かったですか?沖矢昴とのキスは」
「あれは、その…」
安室さんは沖矢さんを知っていたのか
沖矢さんも安室さんを知っていたしポアロで何度か見たことがあるのかもしれない
そんなことよりも彼になんて言えばいいのだろう
正直に薬を盛られてそれを抑えるための手段だったと言った方がいいのか
「実は…
「僕よりも感じていたなんて、恋人なのにいけませんね、カホさん」
そう言うと安室さんは私を横抱きにして自分の部屋の扉を開けた。
「わっ…ちょっと、下ろして!」
彼はそのまま私をベッドの上に寝かせた。
そして私の上に馬乗りになって
「ちゃんと教え込まないとだめみたいですね
貴方が誰のものなのか」
そう言って彼は笑った。