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恋と麻薬【名探偵コナン】

第20章 上司



徹夜明けの二人が帰ってはまた別の部下がフロアにやってくる。
恐らくこの部下もそう簡単には家に帰れないだろう。
何も仕事に手をつけていない今でも既に疲れたような顔をしている。

フロアから人が出入りしている中、風見のパソコンの音が止むことはなかった。

ここに最後に来てからから風見は何度部下にお疲れ様、と言ったか。

何本の缶コーヒーを飲んだか。

初めのうちは数えていたものだが途中からそれをやめた。




永遠と続くタイピングの音。
それは自分からだけではなくこのフロアの至る所から聞こえてくる。

その音はある男が入室したと同時にピタッと止まった。

風見はパソコンの画面の奥にその男が視界に入ると同時に椅子から素早く立ち上がる。

「お疲れ様です降谷さん」

「「お疲れ様です」」

風見の挨拶に続いて周りの部下も声を揃えて頭を下げながら言う。


降谷は部下たちの言葉にああ、お疲れ、と返すと自分のデスクに向かった。

椅子に座り直した部下たちは先程よりも緊張感のある空間で再びタイピングの音を響かせる。




降谷が自分のデスクについて山積みになったファイルを一つずつ開いては閉じていく。

そこへ風見が書類を持って現れる。

「お仕事中失礼します、頼まれていた資料です」

風見は降谷に束ねられた書類を渡す。

「ああ、すまない」

それを降谷は受け取る。




風見は降谷に違和感を感じた。
最近の降谷の機嫌が悪いのは分かっていた。

ただ、今日はいつもと違って見えた。

降谷の雰囲気が…、声が…

先程自分が書類を渡した時にふと合った目は、僅かに血走っていた、ように見えた。

思わず背筋がゾクッと震えるほどに。


それは今、降谷の傍にいる風見にしか分からないであろう変化。

「なんだ風見、まだ何かあるのか」

風見は降谷の前で突っ立ったままでいた。
降谷の声にふと意識が呼び戻され慌てたように言った。

「い、いえすみません。」
「あ、そうだ風見。俺は明日急用が出来た。元々ここに来る予定だったが2、3日は戻れそうにない」
「分かりました」

降谷は作業を続けながらそう言った。


風見は自分のデスクに戻り自分の上司の姿を確認した。
いつもと変わらず的確に素早く作業を終わらせていく姿勢。

自分の思い過ごしだろうか、

風見は降谷を見ながらそう思った。

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