第15章 時を越えて〜分岐〜幸村ver．中編

ーーー堺、港町。
織田軍一向は毛利軍の到着を今か今かと待ち構えていた。
ドカーンッーーー
ドーンーーー
海上で、ものすごい轟音が響いたかと思うと、一隻の船が爆発し炎上し、黒煙が朦々と上がり出した。

秀吉「あれは毛利の船か？」
家康「兵器を載せた船でしょうね。」
政宗「ヒューッ！さすが九鬼。やることが派手だな。」
高みの見物をしていた3人のところへ
「申し上げます！」
兵がやって来た。
「毛利の小船が数十隻、少し離れた波止場に上陸した模様！」

「なんだとっ？！」
秀吉が答えると同時に
「行くぞ！」
政宗は走り出していた。家康も続く。
「第一部隊はこの場に残り、万が一、毛利の船がたどり着いた時に備えろ。」
「はっ」
「それ以外の隊は移動だ！」
「はっ」
そう指示を出すと、秀吉も走り出した。

秀吉がたどり着いた時には既に波止場は戦場と化していた。政宗を筆頭に織田軍と毛利軍の兵が討ち合っている。家康は波止場に向かって来る残りの船に向けて矢を放ち、敵兵を海に沈めていた。
「家康様！我らも！」
そう言って、到着した弓隊が家康に加わると、敵兵は次から次に海へと沈んで行く。
政宗とは少し離れた場所でやり合うのは、黒脛巾組と世鬼一族。こちらが一番の激闘だった。鎖鎌で攻撃して来る世鬼一族に忍者刀と忍び鎌で応戦する黒脛巾組。黒脛巾組が猫手で仕掛ければ、世鬼一族は手甲鉤を繰り出す。正に力は互角だった。
そして、秀吉の前には座頭衆。盲目だとは信じられないほどの鋭く早い太刀筋に、一瞬驚く秀吉だったが
「いざっ！」
負けじと鋭い太刀払いで応戦する。

海上でも陸上でも繰り広げられる凄まじい戦いに、貿易の船や商人は『巻き込まれては大事』と皆、さっさと姿を消した。

ーーー半刻後。
「勝負あったな。」
政宗の言葉通り、戦果は織田軍の圧勝だった。兵器を破壊されたこと、多くの兵が上陸する前に矢で射られ倒れたことが毛利軍にとって大きな打撃だった。黒脛巾組と世鬼一族は辛うじて黒脛巾組が勝利し、座頭衆も秀吉、政宗と織田軍の猛者たちの前に散った。

ホッと息を吐く一同のところへ
「家康様！！」
髪を振り乱しすごい形相の三成が馬に乗り猛スピードで駆けて来た。
「三成？！」
驚いて名を呼ぶ秀吉の前を素通りし、家康の側で馬から飛び降りる。
「すぐに春日山へ！舞様と幸村殿が！！」
息を切らした三成が叫んだ。