第12章 それはずるい
気温は日に日に上がっている。
「水分ちゃんと摂れよー! 」
黒尾くんの声に、「「うぃーす! 」」と反応するみんな。
私も黒尾くんの声を合図に、まだスクイズボトルが行き届いてない人へ渡しに行く。
『虎くん、大丈夫? 具合悪くない? 』
「はぁっ! お! オレハヘイキデス! 」
『そう? 何かあったら言ってね! 』
「ウス! 」
『犬岡くんは? 元気? 』
「元気です!! あ、ドリンク! あざーす! 」
『うん、元気そうだね! 熱中症気をつけてね? 』
「ハイっス! 」
「舞衣さーん! オレにもくださーい! 」
『リエーフくんも元気だね! はいどーぞ! 』
「? オレはいつも元気ですよ! 」
体調を気にかけながら。
「倉尾ー、次ってさー」
『次は森然とだよ! 第2コートでやるよ! 』
「ん、サンキュー。」
やっくんの質問に答えつつ、身体を動かす。
黒尾くんのことは好き。
でも告白はまだしない。
今はみんなのために動く。
そう決めたら、なんだか楽になって。
いつも通り動けるようになった気がする。
「頑張ってますネ。」
『黒尾くん! ドリンクいってる? 』
「おー、もらったよ。」
『黒尾くんも体調気をつけてね! 午後もっと暑くなるみたいだから...』
「マジかよ。まぁ夏だしなァ。」
『何かあったら言ってね? 』
「おー、ありがとな。」
ポンと頭に手を乗せられて。
一瞬ドキンとするけど。
いけない。平常心。
『休憩終わりまーす! 』
黒尾くんにときめいた気持ちを振り払うように、私は大きな声を出した。