第5章 放課後、音駒高校体育館にて
そして帰り道は、いつもどおり。
海とやっくんと黒尾くんと、今日はリエーフくんと山本くんがいた。
分かれ道ごとに人が少なくなり、気づけばまた2人きりの帰り道。
「やー。ほんとありがとな。」
『なんか前も、そんな話した気がする。』
「そうだっけか。」
黒尾くんと2人、つかず離れずの距離で歩く。
『もうインターハイ予選始まるんだね。早いね。』
「おー...あっという間だなぁ。」
黒尾くんの眼は、どこか遠くを見ている。
私がマネージャーをするずっと前から。
私が黒尾くんを見つけるずっと前から。
ううん、私が、バレーボールなんか、知らない時からきっと...。
『...いつからバレーやってるの? 』
「え? んー...いつから...? 小学校くらい...? いや、もっと前か...」
『そんなに早くから? 』
「うーん、確か...。」
やり始めた時すら、最早曖昧なくらい。
「まぁなんやかんやあって、研磨も誘って、こっちでもバレーボールのクラブチーム入って...ってかんじ? 」
『そっか...すごいね。』
私がバレーボールというものを知るずっと前から、きっと黒尾くんはバレーボールに触って。
今までの人生で、既にたくさんの時間を、バレーボールに費やしているんだ。
私は陸上部も中学までで辞めてしまったし。
そんなに長く、続けてきたことなんてない。
自慢出来るほど上手いこともないし。
何かひとつを、ずっと続けることの難しさも、大変さも、何となくだけど、知っている。
少なくとも私には出来なかったから。
だけど、当然のように、今までバレーボールに向き合ってきた黒尾くん。
そして、これからやっていく試合は、高校生活最後の年の公式戦。ひとつの節目。
『...試合、頑張ろうね。応援してる。』
「...おー? どうした急に。」
『なんとなく。言いたくなっただけ。』
「ナンダソリャ。まぁ、今年は特に頑張れそーかもな。」
『最後だから? 』
「それもあるけど。優秀なマネージャーが入ってくれたし? 」
『からかわないでよー。』
「ほんとに思ってマスー。」
『まだまだ未熟ですから。これからですよ? 』
「そりゃー頼もしいねェ。」
夕日は、夕方の道と私たちの顔を照らす。
日が少し長くなった。夏はもうすぐだ。