第15章 道
「信長様っ、やめて下さい!」
「顕如様、おやめ下さい!」
私と蘭丸様はすかさず二人の間に入って斬り合いを止める。
「お願いです信長様、少しだけ、........少しだけ私に顕如様達と話をする時間をください」
信長様の胸に腕をまわし、私は見上げてお願いをした。
「空良.....................分かった。貴様の好きにしろ」
じっと私の目を見て溜め息を短く吐くと、信長様は刀を収めた。
「ありがとうございます」
お礼を言うと片手をキュッと優しく握られた。
私が不安な事を分かって、大丈夫だと伝えてくれているみたいだ。
その温かくて大きな手から勇気をもらった私は、その手をそっと離して一歩前へ出た。
「...........顕如様」
敵同士となってしまった私たち.......
こんな形で顕如様と向き合う日が来るとは思ってなかった。
父上と母上を失った日もそうだったけど、この乱世の為せる技なのか、自分を取り巻く環境はいつも目まぐるしく変わって行ってしまう。
「空良、お前と話すことなど何もないと言ったはずだ。お前が信長に堕ちた時点でもうお前は裏切り者だ。お前の顔など二度と見たくはない。早くここから立ち去るがいい」
蘭丸様に押さえられる様に立つ顕如様は私を睨みながら言葉を発する。
「顕如様!そんな言い方......」
そんな顕如様をお諫めしようとする蘭丸様。
「蘭丸様良いのです。けれど顕如様、少しで構いません。お話をさせて下さい」
顕如様の目をしっかりと見つめ、.....それからゆっくりと頭を下げた。
少しの間があり......
「離せ蘭丸、 空良に危害は加えぬ」
顕如様は蘭丸様の手を解いて私を見ると、一歩、私に向かって歩みを進めた。
「...........どうせ貴様を騙していた事への恨み言であろうが、最後に一言だけ聞いてやる」
顔は険しいままだけど、声から刺々しさが消え優しくなった。
地下牢に入れられていたから、袈裟は少しすすよごれてはいるものの、目立った外傷はなく、拷問などはされていない事にほっと胸を撫で下ろす。
「.....あの日、あの真実を知らされた日からずっと考えて来ました」
ちゃんと気持ちが通じる様に、私なりに言葉を慎重に選ぶ。