第15章 疲労困憊
「おや!ドクターが言ってた子見っけ!」
「!」
あの時最初に見た赤タグのサンクタだ。
驚いたが、私は驚きで声を失ったまま足元の水筒を取り、渡した。
「!あたしにくれるの!ありがとう!あたし、エクシア!ロドスとは契約関係にあるよ!」
「私さくら、エクシアもお疲れ様だね」
「お疲れ様ー!あ、まだ水筒あるんだね」
エクシアは私の足元にある水筒を見て言った。
「うん。赤タグの人用だよ」
「じゃあ呼んでくる!おーい!」
エクシアがデッキ中央に戻って行った。それを見届けていると、クツクツとノイルが嗤い始める。
「優しい奴だな?」
「だってご飯無しでしょ?可哀想だからね」
「はー!お前みたいな平和惚けした優しい奴見た事ねぇな!…うん?待て…ってことは飯があるのか!?」
「お腹空いてると思ってさ」
持ってきたリュックを下ろして、持ってきたおにぎりをポンポンと渡していく。
「食堂でね、作らせてもらったんだよ。と言っても握っただけ、ぐええええ!?」
「お前良い女だな!ホント良い女!助かる!!」
この世界の男性は抱き付くのが好きなのだろうか。それともガードも反撃もしない私が悪いのだろうか。まぁ悪い気はしないのでそのままにしておいた。
「わー!!ご飯だー!!お腹空いたよさくら!あたしにも頂戴ー!」
「おかえりエクシああああああああ!!?」
撤回。女性も抱き付くのが好きらしい。
可愛いからまぁ悪い気はしない。好かれるのは好きだ。
「エクシアさんから頂けるって聞いてきちゃった。君がさくら?」
「ムースもご一緒していいですか…?」
2人の女の子がやって来た。猫ちゃんの方は閉じ込められている所を助けてくれたムースだ。
私は頷いて2人にも水筒とおにぎりを渡す。
「君は?」
「あたしはクリフハート!お兄ちゃんから話は聞いてるよ。優しいんだね!」
「お兄ちゃん…?」
「おっきくて、肩に鳥が乗ってる人!」
「……あぁシルバー!」
よくよく見ると、尻尾の斑模様といい、白い毛並みといい、シルバーと似ている所がある。大事にされてきたんだな、とその振る舞いを見ているとよくわかる。
ワイワイ、と食事をしている三人を見つめていると、不意に右の方から視線を感じた。