第5章 好きな人
目が覚めたグレンさんと一緒に食堂へ行く事を告げた。
グレンさんはかなり体調が良くなったみたいだけれど、まだふらつくのか私が支えながら食堂へと移動した。
「目が覚めたんだね、良かった!」
私達が食堂へ行くと、女将さんが涙ぐみながら喜んでくれた。旦那さんも調理場からわざわざ出てきて、グレンさんの無事な姿を確認すると笑顔で頷いていた。
促されてグレンさんと一緒に食堂のテーブルへとつく。旦那さんが消化に良いものをと野菜たっぷりのスープを作ってくれた。
え?グレンさんスプーンが使えない?毒がまだ残ってる?
…さっき余裕で二人分の椅子を抱えてた様な…
まだ手が不自由だと言うグレンさんの代わりに、私がスプーンでスープを掬う。そしてグレンさんの言う通りにフゥフゥと息を吹きかけ、冷ました後に彼の口へと運んだ。
スプーンを頬張るグレンさんはとてもご機嫌だった。
「!」
グレンさんの口にスープを運んでいると、扉から入って来た人物に名前を呼ばれた。その声に反射的に体が強ばった。
「っ」
扉から入って来た人物を確認したグレンさんは、椅子から立ち上がると素早く私の前へと回り込み、私を背中へ隠してくれた。
「、あぁ、無事で良かった!あの後、森へ戻ろうと思ったんだ。でもどうしても戻れない事情があって…」
止めようとする女将さんや宿に泊まっている皆の手を振り払い、近付いてくるオリオンさん。私はオリオンさんが怖くて、グレンさんにしがみついた。
「…にこんな事をしておいて、よく言う…」
グレンさんが私の頬に貼られたガーゼを見て不快そうに、チッと舌打ちした。
「ここから出てって!にあんな酷い事しておいて良く顔を出せたものだわ!」
自分に好意を寄せていたリリアンからの避難の声にたじろいだオリオンさんが、私へとすがる様な目を向けてきた。
「な、なぁ、優しい君ならわかってくれるだろう?仕方の無い事だったんだ。それにほら、俺はこれから騎士になって王都で…」
そこでまた扉が開いた。入って来たのは自衛団の詰所に報告に戻っていたマルクさんと、副団長さんだった。それを見たオリオンさんの目が輝いた。
「丁度良かった!あんた達からも言ってくれよ。俺を騎士に勧誘しに来たんだろう?なぁ、今すぐ俺を王都に連れて行ってくれ!」