第2章 逢魔が時
「失礼します」
そう声をかけると、ふすまの向こうから「どうぞ」と少し慌てたような声が返ってきた。
咲がふすまを開けると、炭治郎がこちらに向かって駆け寄ってくるところだった。
「咲!」
炭治郎は咲が少し開けていたふすまを更に開けて、松葉杖をついた彼女が通りやすいようにしてくれた。
それから、部屋の中央まで進んだ彼女に、自分が使っていたと思われる座布団を差し出してくれる。
「ありがとうございます」
きめ細やかな気遣いに、咲はニコリと炭治郎に笑顔を向けた。
まっすぐに目が合うと、炭治郎は少し頬を赤く染めてニコッと陽の光のような笑顔を浮かべた。
咲は座布団の脇で背筋を伸ばして改まり、頭を下げた。
「昨夜はきちんと自己紹介ができませんでしたので、改めて伺いました。私は皆さんへの給与の受け渡しや、荷物の配達などを担当させていただきます。今後、どうぞよろしくお願いいたします。そしてさっそくなのですが」
そう言って咲は、肩に掛けていた鞄から給与袋を取り出して炭治郎の前に置いた。
「わぁ、ありがとう!でも、先月までは別の隠の人が届けてくれていたけど……?」
不思議そうな顔をする炭治郎に、咲は説明する。
「隠の中でもたまに配置替えがあるのです。任務中の事故で欠員が生じることもあります。その様な時には、こうやって担当隊士の見直しが行われるのです」
任務中の事故、という言葉に胸を痛めたのだろう。
炭治郎は少し悲しそうな顔をしながら、咲の話を聞いていた。