第5章 薔薇を塗ろう② トレイ・クローバー
「ははっ、ならもう食べないだなんて言わないでくれよ?」
一見すれば朝、カップルの仲睦まじい様子だが、ここに隠れて居るのはそんなものではない。
愛すら凌駕する執着と、汚い感情。
凝り固まっていた汚い感情は、彼女を手に入れたことにより溶けだして、ゆっくりとゆっくりと彼女を蝕んでいっている。
「ちょ…先輩…」
トレイは顔を赤らめるの腕を引っ張って自分の胸の中にしまい込んだ。
誰にも渡さない。
譲ったりなんかするわけが無い。
山吹色の瞳はどこか別の所を睨んでいるようだった。