第4章 浅き夢みし 【現代日本パロ】
「ねえ、あそこなんてどうかな?
花火がよく見えそうだ」
「あ…いい、と思います」
会場がより活気に満ち、夢の終わりが近いことを悟った。
しかし、感傷に浸る余裕はない。
ちょっと耐えられないくらいに足が痛いのだ。
鼻緒が擦れて皮がめくれているのだろう。
ハンジさんが歩幅を合わせてくれているとはいえ、常駐する痛みは消えない。
「いッ…」
我慢できず腰を落としてしまった。
驚いた様子のハンジさんが、守るように目線を合わせる。
「っ?大丈夫…そうではないね」
こちらを見つめる顔を見て申し訳なさがふくらんでいく。
早く気づけなくてごめん、と謝られる始末だ。
ハンジさんはその体制のまま思考を巡らせている。
提灯に照らされる彼女。
長い睫毛が綺麗だ、なんて場違いにもほどがあるだろうか。
「…高台に行こう。
そこなら人もまばらだろうし、あなたの足も診てあげられる」
「いえ、大したことじゃないので」
「私が心配なんだよ。さ、乗って」
ハンジさんは背を向け、私が体を預けるのを待っている。
せっかくのお祭りなのに…。
気持ちをろくに返せもしないで、一丁前に面倒ばかりかけて。
「よっ…と」
「…重くないですか」
「ぜーんぜん。そんなこと心配しなくていいの」
ハンジさんの優しさをひしひしと感じる。
本当、情けない。
こんなに素敵な人だ。
いつか愛想をつかされてしまったらどうしよう。
そう考えると、じわりと熱いものがこみ上げてきた。
「ぅ…っ」
「!?どうして泣くんだよ」
あやされるように体が軽く上下する。
色々な感情が入り混じって、うまく組み立てられない。
「ふ、世話が焼けるなあ」
「…なんでちょっと嬉しそうなんですか」
「秘密」
ハンジさんは高台に向かって歩き出す。
体温とリズミカルな揺れが心地良い。
私は思わず、肩にぽすんと顔を預けた。