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あかいいと。【ハンジ・ゾエ/進撃の巨人】

第4章 浅き夢みし 【現代日本パロ】


落ちかけた陽が私を照らす。
カランコロンという下駄の音、肌に纏わりつくようなぬるい風。
祭囃子が微かに耳に届き、高揚が抑えられない。


ああ、夏の匂いだ。


特徴的な噴水の前で足を止めた。
同じように待ち合わせをしているのだろう、色とりどりの携帯を弄る人で溢れている。



「この辺、だよね」



少し早かったかな。
そわそわと浮足立つ心が自分じゃないみたいで。



「!」



どきりと胸が高鳴る。
振り向くと、少し汗ばんだ様子の恋人が見えた。
Tシャツにパンツスタイルというラフな格好が彼女らしい。



「ハンジさん!」

「やあ…って、貴女ほんっとうに可愛いね!?」

「な…っ」



見つけるなり全身を凝視される。
どぎまぎと目を泳がせる私をよそに、心底やわらかな笑みを降らせた。



「浴衣似合ってるよ」



…西洋人か、貴方は。
飾らない言葉が胸を突いて息苦しくなる。
恋仲だというのに不意打ちには未だ慣れない。
ごまかすように顔を歪め、灯りの方へ歩き出す。



「…い、行きましょう!
私りんご飴食べたいです!」

「ちょ、?はぐれちゃうって!」



手を握られようがずんずん進む。
些細なことでドキドキしてばかみたいだ。


…でも


この形容しがたい気持ちはいやじゃないって、伝えたい。
そんならしくない考えが浮かぶ。


きっと夏のせいだ。
縁日にはしゃぐ子どもの姿。
あの子たちみたいに…いや、その半分でも素直でいられたらと、まだ朧げな月に祈った。



「照れてるの?」

「……違います…」

「かーわいい。
それと、屋台そっちじゃないよ?」
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