第3章 悪夢ノ始マリ
『また来た。』
『わんわん、ここ居て。』
『邪魔』
『ワタシとわんわんの世界に来ないで。』
いつも通り血溜まりが広がる
筈だった
「お嬢サンっスね?死んだ狼の魂魄を護る子って言うのは」
突如現れたのは全体的に緑の男
その男は今まで会った黒い人の中で桁違いに強かった
また、男にとっても少女は普通と比べ異質な存在だった
「(アタシ会って向けた殺意……いや、霊圧が遥かに大きい……でも会うまで霊圧を感知しなかった…無意識下で霊圧を閉じていた……?)」
考える男に痺れを切らした少女は問うた
『おじさん誰?わんわんトりに来たの?あげない。わんわんはワタシのおかさんなの。トらないで。』
「お嬢サン、お嬢サンの本当のお母さんはどこっスか?」
『わんわんがワタシのおかさんなの。』
「お嬢サンその"わんわん"は死んでるっス。分かってるでしょ?」
『わんわんはここにいるもん。』
「"わんわん"は天国に行かなければならない。お嬢サン、"わんわん"コチラに頂けませんか?」
『わんわん居なくなる?ワタシは?どーする?わんわんと一緒に行く。』
「お嬢サン。アナタは一緒に行けません。」
『いや!いやいやいや!おじさんもワタシとわんわんをばいばいさせる?わんわんとワタシはずっと一緒なの!ずっと……ッ…いっ、しょ…な、ッ……ヒグッ、うぅっ、トら、なッでぇ…ッ?』
座り込みいやいやと首を横に振る少女
「………お嬢サン。今離れても、またいつか会えます。大丈夫。アタシが保証します。」
『……ッ、いつか?いつ、…ッかって』
「いつかっス。でも、絶対に会えます。"わんわん"はお嬢サンが大好きみたいっスから。」
『でもッ、そしたらワタシひとりぼっちになる。いやだよ、わんわんと居たいよぉ』
くぅーん
『いやだよぉ、ひとりにしないでぇ?』
ウォオーン
『ヒグッ、……ふッ、うぅぅッ……、うッ…うわぁぁん!!』