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夢過ぎる水溜りボンド

第1章 episode1


気持ちは、両親の目さえ気にしなければ至極軽かった。

でも、外には出られない。
人の視界に入ること、目を合わせることが怖いのだ。
夏休み最終日に兄に言われて切ったはずの前髪は、すっかり目を覆っていた。
気が付けば、服も暗い色の肌を見せないでいいような
体形がわからないモノばかりを好むようになっていた。

兄が今の私を知ったら悲しむだろうな。そう思うといつも心がチクッと痛んだ。

学校の課題は大して苦にはならなかった。
そのため、今まで学校へ行かなきゃ…体がいうことを聞いてくれない…と
苦悩していた時間を、有意義に使えるようになった。
これを私は自分の興味関心の赴くまま学びの時間にあてた。

そんな生活にも少しづつ慣れてきたある日
兄から一本のメッセージが届いた。

カオル□ 学校はどう?今度の休み、こっち出て来れる?ライブするんだ!

驚いた。
学校のことについての後ろめたさはもちろんのこと
私の中では兄と「ライブ」と言うワードは直結しなかったから。

その日の夜
両親に尋ねても答えは同じ、何も知らないと…
夏休み、兄は何も言っていなかった。

マコト□ お兄ちゃんに話したいことがあったの。だから、週末行くね。

私は意を決して返事をした。
とにかく学校のこと、ちゃんと話そう。と。
外に出ることには不安があるけれど
兄にこのまま秘密を抱えて過ごすよりも嫌なことはきっと他にないから。

メッセージを送信し、机にスマホを置くより先に兄からの返信が来た。

カオル□ 良かった!会場までの地図送るよ!
     当日は迷う前に電話すること!絶対だよ!

返事は想定済みってことか…さすがだな。お兄ちゃんは…

週末久しぶりに兄に会える嬉しさで心がちょっぴり温かくなり
その日はいつ振りか、朝まで一度も目が覚めることなく眠れた。
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