• テキストサイズ

夢過ぎる水溜りボンド

第2章 episode2


「テストだったんだよ。」

会場の興奮が収まってきたころ
人混みをかき分け私のもとへ来てくれた兄が耳打ちした。
そして

「詳しいことは、後で話すね。もう少し待っててね。
今日こっちで泊まるでしょ?
近所にうまいラーメン屋あるから帰り寄って帰ろ!」

そう言って兄は再び人混みへと消えて行った。
手持ち無沙汰になってしまった私はポケットからスマホを取り出した。

…圏外だ。

ライブハウスが地下のため電波が来ていないようだった。
お母さんには後で連絡しよう。そんなことを考えながら
数時間前についた画面左角のヒビをさすった。
私はそのままスマホでメモを書き始めた。

生まれて初めてお笑いのライブを見て感じたこと、書き留めておきたくなったから。

ピン、漫才、トリオ、コント…

ライブ一連の流れを思い出しながら
それぞれの内容や私なりの感じたところをただ書き連ねた。

その作業は思いのほか熱中できるもので
話を終えた兄が着替えて、既に空いてきた隣の席に座っていたことに
気が付かないほどだった。

「…ぃてる?聞いてる?おーい!そろそろ帰ろうか?」

兄の声を認識し、私は顔を上げた。

『う、うん!』

席を立ち、会場を出た。
兄の家に向かうため駅方面へ歩き始めたとき
後ろから

「ぴぃーさぁーん!」

と、大きな声が聞こえた。
兄に合わせて振り向いた私は驚いた。
あの人…さっきの。。

スマホ事件(?)の彼が、兄に駆け寄ってきた。

「Pさんッ!お疲れさまー!Pさんのネタ、俺好きだわぁ~!
今度なんかオモレーことやろ!」
/ 33ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp