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ALIVE【果物籠】

第4章 蓋




「弱さ見せねぇのが強ぇの?自分だけで背負うことが大人なのかよ?」


ジッと私を見据えるその目に飲み込まれてしまいそう。

やめてもう。これ以上は。


「難しいことよく分かんねーけど、それでも俺は違和感しか無ぇ笑い顔より、今の泣きそうな顔のがよっぽどマシに見えるけどな」


求めてしまう。

他人に受け入れてもらいたいって。

いつからこんなにも欲張りになったんだろう。

何度闇の中に戻っても、光が見えたらそれを求めてしまう。

弱さを見せてもいいの?

受け入れてくれるの?

いや、ダメでしょ。忘れたの?



必死で涙が溢れるのを我慢した。

一度溢れたら止められないから。


「なんだよ、その顔。ひっでぇ顔してんぞ」

「さっきと言ってること違うんですけど?マシなんじゃないの?」


溜まっていた涙を拭って睨むと「耐えなきゃマシだったな」と茶化すように笑う。


夾は優しい。

もしかしたら"真実"を知っても受け入れてもらえるかもしれない

自分でも矛盾していると思う。

求めたいのに、求めない。



「ねぇ…言い忘れてたんだけど…」

「なんだよ」

「明後日から避暑の旅だって。紅葉から電話あった」

「お前すげぇタイミングでぶっ込んでくんのな。頭が追いつかねーわ」


ほら、こうして誤魔化して逃げる。

強引に話題を変えると案の定、夾は困惑したように目を細めて口を歪ませていた。


「強制参加だよー行かないっていう選択肢ないからねー」

「……めんどくせぇ」

「準備しててね!拒否権ないからね!」

「わーった。わーった。とにかく1人で背負うな。さっきみたいに吐き出せるもんは吐き出せ。…俺はお前が…産まれてきて良かったって思ってるから」


私の頭にポンと手を置いて、救急箱を手に立ち上がると「おやすみ」と顔を隠すように背中を向ける。


その服の裾を持って引き止めたくて、自然に出ていた手を急いで引っ込めて「おやすみ」と返す。


もう少しここにいて欲しいだなんて、図々しいにも程がある。



——— 猫を1番騙しているのは誰?


また慊人の言葉が頭の中に響いてキツく目を閉じて、布団に顔を埋めた。

布団を濡らしていくそれが、どういう感情で溢れてきて止まらないのか自分自身でも分からなかった。


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