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キメツ学園【鬼滅の刃】

第29章 前世の記憶ー壺に落ちた落雷ー


「……」


私の質問には答えてくれなかった。

あぁ、もう。


遠くに行ってしまう。


「安城殿」

「………」

「安城殿」


ただ、その時は静かに。


ピクリと綺麗な瞳が動いた。
涙が一粒こぼれる。


「安城殿」


それが答えだった気がした。


「安城殿」

「安城殿」

「安城殿」


狂ったように名前を呼び続けた。


「安城殿」


ずっとずっと呼び続けた。
気配でわかる。まだ、生きている。


「もうお止めよ。」


ふと、声をかけられた。
ふわりと風がそよぐ。


当時柱だった人だ。
いつの間に来ていたんだろう。もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。


「安城殿が」

「お止め……。名前を呼ぶのは、お止め。」


まるで小さい子供をあやすような口調でその人は言った。
私は首を横にふった。駄々っ子のように何度も何度も。


「止めておやりよ。」


その人は目を閉じて、微笑んだ顔のまま動かない安城殿の頭に手を置いた。


「天晴が…眠れないだろう……。」

「………」


私はずっと笑っていた。

名前を呼ぶのを止めました。
一気に安城殿が重くなりました。


その瞬間、死んでしまいました。


名前を呼ぶのを止めた瞬間に。


「おやすみ、天晴。」


その人はそう囁いた。

私は一気に脱力感に襲われた。


「あなたも、眠るの?」


その人は私に聞いた。


「…いいえ。」

「そう。じゃあ治療をしないとね。」


私はその場に安城殿を寝かせた。
あとは隠に任せよう。

休まなければ。



また、今宵も私は鬼を斬らなければならない。


前を向かなければ。あの夜、つなぎ止められたこの命を抱えて眠ることなく生きていかなければ。

振り返りませんでした。その人と二人でただ歩きました。









































けれど。
その夜を思い出す度に。


























































































私はその名前を呼び続けるのでした。
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