第14章 Additional Times
「それは違うだろ?慧に我慢させたのは俺だ」
今度は大般若が三日月の部屋に入ってきた。
「っっ…」
その言葉に苦しくなってしまう。
「あの日、あまりに慧の気が高まり過ぎてて、これ以上はまずいと俺が慧に我慢を強いた。だからこそ鶴丸サンにその穴埋めを頼んだんだろ?」
「これも全て俺のせいだ」
三日月が言う。
「慧の気をより多く遣らせるように指示したのは俺だ。慧にさらけ出せと仕向けたのも。そうすれば慧は俺たちに溺れ素直に受け入れ、感情のブレも少なくなると思ったからだ。だからこそ、その気を制御せねばならなかったのに、俺はそれを怠った。その事で青江にも大般若にも余計な手間を掛けさせてしまった」
申し訳なかった、と三日月が頭を下げた。
「…何言ってるんですか、天下五剣様が」
私が震えた声を出すと、その場にいる皆が目を見開く。
「神様たちがよってこぞって人間風情に頭を下げるなんておかしいでしょう?叱ってくださいよ。逃げるなって、我が儘言うなって」
ぼろぼろと涙が溢れ出す。
「優しすぎるでしょう?そんなの」
「慧ちゃん…」
「私はもう溺れてます。この本丸が居場所だと思ってるんです。だけどいつも頭と身体が追い付かない。やっと理解できたと思ったら今度はダメだって言われて。私はただ愛して欲しいだけなのに、愛したいだけなのに、それすらも許されないただの作業のようなセックスの毎日で…。それなのに逆らえなくて、求められたらどこまでも落とされて…」
涙が止まらなくなって、手の甲でぐずぐずとそれを拭う私に、
「もう、言わなくていいよ。それ以上自分を卑下したらダメ」
後ろから清光が抱き締めて言った。
「俺が、俺だけは慧ちゃんを愛すから。慧ちゃんが見つめてくれるなら、俺が全部応えるから。ひとりで苦しくならないで?」
ぎゅっと抱き締めてくれる腕も胸も温かい。
「ぅぅっ…」
清光の腕にしがみついて泣いた。
そして、泣きすぎてよく判らなくなってしまい、そのまま私は眠ってしまったらしい。
目が覚めるとあの寝室のベッドに寝かされていた。
隣には清光の緋い瞳。
「起きた?」
優しく目元を撫でてくれる。
「清光…ごめんね」
「んーん。俺こそごめんね」